メンタルヘルスの回復・維持・増進に、WOOPの法則が効果的な理由

「メンヘラ」という言葉をよく耳にするようになりましたね。「メンタルヘルス」が略されて「メンヘラ」なのですが…

「メンヘラ」という言葉は、匿名掲示板の「メンタルヘルス板」という心の悩みについて会話する掲示板に集まる人たちを「メンヘラー」と呼んだことがきっかけ。「心の健康が病んでる人」を指すようになりました。

メンタルヘルスとは、心の健康状態や幸福感のことです。メンタルヘルスが良いと、満足感を感じられたり、自分に自信が持てたり、人間関係が円滑になったり、仕事や勉強に集中できたりします。逆に、メンタルヘルスが悪いと、不安や鬱などの心の病気にかかりやすくなったり、人とコミュニケーションが取れなくなったり、やる気が失せたりします。メンタルヘルスは、身体の健康と同じくらい大切なものです。

メンタルヘルスが悪くなる原因は色々あるかもしれませんが、大抵はその人自身の弱さではありません。ひどい苦痛を感じたり、思考や感情や行動をコントロールできないと感じることもしばしば。だから、カラダの健康と同じくらいメンタルヘルスを健康に保つのは大事。むしろメンタルヘルスのほうがカラダの健康より大切です。

コロナで閉じ込められていた間に、心の病になってしまった人が多く、どんな人も心に影響を受けてしまいました。「自分は強い!」と思っていた人ほど、心を病んでしまったと言われ、今もなお苦しんでいる人たちがたくさんいるそうです。

私も数年前、鬱症状に苦しんだ時期がありました。いま苦しんでいる方々の心の内を思うと、なんとか力になってあげたいと思うのです。

「WOOPの法則」は、内面に潜む障害となる思いやネガティブな心の傾向を「乗り越える」というこのメソッドの箇所を使えばメンタルヘルスの健康回復と維持増進に使えそうです。実際、このコロナの期間中に色々な問題に遭遇しましたが、心の健康を高いレベルで安定できたのはWOOPの法則を実践した効果もあると感じています。

この記事では、メンタルヘルスの回復・維持・増進に、WOOPの法則が効果的な理由をご紹介します。ぜひ最後までお読みください。

ネガティブな思い込みを消し去るには

WOOPの法則が生まれたきっかけは、1989年まで続いていた米国とソ連が対抗していた「冷戦時代」のドイツに住む人々の心の傾向にありました。

歴史で学んだと思いますが、その頃はドイツは東西に分かれ、東ドイツは社会主義イデオロギーにありました。エッティンゲン博士は心理学研究を目的に東ベルリンに入り、東ベルリン側にあるバーで飲んでいた芸術家にリサーチを行いました。

インタビューを受けた彼は「パリへ行って毎日自由に絵を描く」という夢を描きながら、小さな絵を目立たないように書くささかやかな活動を行っていました。でも毎日うつむき加減で暮らす心の持ち主でした。社会主義下の東ドイツは、芸術活動にかなり厳しい制限が課されていました。

「パリへ行く」行動の自由を得るなど、自身の努力では決して実現しない夢を支えに生きていく人は、どういう生き方になるのか?

この出来事が、夢とやる気の相関関係を明らかするモチベーション心理学を研究テーマに選んだきっかけでした。

それから数年後、ベルリンの壁が民衆の手で壊されて、彼の夢を叶える道ができたわけですが、まさかこんなことになるとは誰も夢にも思いませんでした。

令和の日本に住む私たちの時代感は、全てが不確定な時代。自分が直面している問題がどのように取り除かれるのか、どうサバイバルすれば良いのでしょうか?

「夢見るののは大切」と言われていますが、どうしようもない状況に囲まれて夢なんか見ている場合じゃないという人はたくさんいます。落ち込んだり、不安を感じたりして、決して何も好転しないように思える状況で過ごしているのです。

少し前までみんなそうだったのです。

もはやネガティブに考えながら生活することに慣れていて、ポジティブな将来を夢見るなんて思いもしない暮らしをしていて「ミスをして苦しんで追い詰められる」というネガティブな不安と恐れを思い描きがち…が当たり前で過ごしていました。

他にもこういうことがあるかもしれません。

40歳代の内気な男性は、人付き合いが苦手で社交的になろうと努力した時期もありました。彼女を見つけていい感じになって結婚することを夢見ていた時期もありました。でも全部裏目に出て、「もう無駄。夢見るのやめた。無理だ」と悲観しているかもしれません。

ある警察官は職務を遂行する中で重傷を負って退職を余儀なくされました。警察官に誇りを持って職務についていた彼は「同じくらい惚れ込む仕事なんて見つからない。探すだけ無駄だ」と思っているかもしれません。

数学のテストでうまくやれそうにない学生は、「また失敗するかも」と不安になってネガティブな思いに負けてしまいがち。試験の時に上がってしまうかもしれません。

こういった将来に対する恐怖心に打ち勝つのに、WOOPの法則を使うことで対処できることが研究により示されました。

人種差別を克服する社会実験とその成果

人は、自分と異なる社会集団や民族集団に、理由無く、恐怖心を抱きがちです。このような恐怖心のせいで、世界各地で様々な集団が互いに避け合い、憎み合い、戦果を交えることさえあります。とても残念なことではありますが、現実に生じている事柄です。

ドイツや欧州圏では、外国人嫌いが深刻で根深い問題となっていて、若者同士が街で喧嘩をしたり、暴力的イデオロギーを掲げる集団の台頭につながっているという見方があります。

ではこの理由のない不安、正しくない恐怖感を、どうすれば乗り越えて仲良くなれるのでしょうか?

その道筋をWOOPの法則が示しました。

1)不安になる要素を正直に見つめる

こんな質問が投げかけられました「__地区に移民と政治亡命を求める人たちのシェルターがいくつか作られる計画があります。そのことがあなた個人に及ぼすネガティブな影響について考えてください。状況はどのように悪くなりますか?どんな影響に苦痛を感じますか?あなたの日常生活はどのように邪魔されますか?自由にイメージし、空想し、考えてください。」

2)ネガティブな空想が現実になることを阻む、ポジティブな現実をイメージする

「外国人とサッカーするという体験がすごく良かった!ようやく強くてフェアな対戦相手ができた!」という興奮を誘う若者たちの意見を聞いたり、「家具を車に積んで新居に引っ越したんだけど、二人の外国人が、重い荷物を上の階にに運ぶのを手伝ってくれたんだ。とても助かったし友達になった」という心温まるような経験を読むなどして、「外国人との接触を不安に思わないし偏見を克服できる」というポジティブな空想を、自分なりに思い描きます。仲良くやっている様子をイメージし幸せな自分に浸ります。

3)不安になる要素に直面する最悪な状態を想像する

もし自分が不安な要素に直面した時、自分の心の中で、心はどう反応するか?最悪な状況を思い描きます。あなたの心の中の出来事なので、自由に思い描いてください。他の人には言えないような想像でも結構です。あなたの心のはその時どうネガティブに反応するかを書き出すことが効果的です。

このプロセスがあなたの不安を解消することになります。

4)ネガティブな心を克服する行動を計画します

3)のワークを行ったなら、自分の心の変化をポジティブな方向に向ける解決策も同時に思い浮かんだはずです。それを発揮できる行動を書き出します。

「深呼吸して10秒数えて笑顔になる。」「一旦席を外して心を整える」など、あなたにとってポジティブになれる具体的な行動を書き出してください。大切なのは「あなたにとって」です。あなたの心の障害をポジティブなものに切り替えるものです。

それをIF_THEN_ルールにします。こんな具合です。

「もし私に 3)であげたようなことが起こり、心が 3)で感じたような思いになったなら、私はその思いを解消するために______を実行します」

言われのない不安を克服するWOOPの法則

このようなプロセスをきちんと踏むことで、言葉にできない不安を乗り越えてきた人たちが大勢います。わずかな真実、自らの経験に基づく度がすぎた不安にも効果があるようです。幼い頃に歯医者で2〜3回痛い思いをした人なら、今も詰め物を取り替えてもらいに行くのが不安になりますし、その不安が大きな恐怖となっていて、手の施しようも無くなるまで治療を先延ばしにしてしまうかもしれません。

1)不安になる要素を正直に見つめる

今の自分にとって、どんなことが不安なのか書き出しましょう。

2)ネガティブな空想が現実になることを阻む、ポジティブな現実をイメージする

不安に思わなくてもよい現実を考え、自分の理想の姿をポジティブに思い描きましょう。「大人の男性として美しい歯と素敵な笑顔を絶やさずにできる」姿なんてどうでしょう。

3)不安になる要素に直面する最悪な状態を想像する

なぜ不安に思うのか?徹底的に深掘り、最悪の状況に直面する自分の心を探りましょう。なんでそんなふうに思ってきたのか!びっくりしたり笑ったり涙するかもしれません。それらを全てやさしい気持ちで受け入れましょう。可愛いところがある弱い自分を愛するのです。

4)ネガティブな心を克服する行動を計画します

もし3)を思ったらわたしは4)を実行します。これで克服する計画ができました。

この手順を踏むことで、歯医者トラウマにうまく対処できるようになり、大人の男性として美しい歯と素敵な笑顔を絶やさずにできるようになれます。

人はしばしば悪いことが起こりそうだという考えに囚われ、他の可能性や選択肢を思い浮かべられなくなりがちです。

でも、時間をかけて、一旦心をさまよわせて、その後に頼りになる現実に焦点を合わせることで、強迫観念から自由になることができます。

大学生で落第することが不安なら、これまで収めてきたあらゆる成功と、今受けている仲間のサポートを思い出してください。失業することに不安を感じているなら、上司との心強い会話を思い出しましょう。

自分の不安に負けてはいけません。それをWOOPで表現してみましょう。

心が穏やかになり、無力感がなくなり、「うまくやれる」と感じられるようになります。

不安はどこかに流れて行ってしまい、自由になったと感じます。

言われのない不安に襲われる時、このような小さな勝利が「私がまた不安になってもまた対応できる」という自信につながっていくのです。

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