「紙は人の心を開くんだよ」幼い頃、そんな話を聞いた記憶があります。「そんなこといったかね?」と歳を重ねたその人は申していましたが、紙に自分の言葉で書き出すことで心が落ち着く「エクスプレッシブ・ジャーナリング」が世界的に注目されています。確かに自分の手で紙の上に言葉を書こうとすると、呼吸が深くなりだんだん落ち着いてくるのを実感します。
そんな紙のサイズですが、紙文化の日本では太古の昔から基本サイズが定められ流通していました。その1つが「美濃判」です。
美濃判は江戸幕府が公式に使用したサイズで、身分の高い人だけが使うことを許されたサイズ。その用紙はもちろん本美濃紙が使用されていました。
岐阜県美濃市では現在も「本美濃紙」として引き継がれている和紙。京間判サイズで基本的には生産されていますが、「美濃判」というサイズで漉かれていた時代が長くありました。
美濃紙は最高級の障子紙として重宝され、障子紙といえば美濃、美濃と言えば障子紙とされるほどでした。
その美濃紙の美濃判サイズは縦27.3㌢横39.4㌢で、これを半分に折り端を綴じて江戸の公式帳面として使っていました。時代劇でよく出てくるあの帳面は美濃判サイズなのです。
時代は明治維新後、誰でも自由に紙を使っても良いことになり、それまで位の高い人だけが使うことを許された美濃紙を誰でも使えるようになりました。それで庶民も障子紙に美濃和紙を使うようになり、一気に流通が盛んになりました。
基本のサイズが定められていたとは言え、地方毎のばらつきがあった紙。その上、ドイツ規格のA0サイズの外国の紙が出回るようになると、運搬が一気に煩雑になりました。それだけ日本の国が急激に栄えた証拠なのですが、嬉しい悲鳴です。
それで日本国の紙のサイズを統一することに鳴ったのですが、それまで江戸幕府が使っていた帳面の美濃判を基本にしてサイズを決めることにしました。
A0サイズの面積は1㎡なので、単純に1.5㎡のルート長方形をB0とし、それを半分に切り半分に切り半分に切り半分に切るとB4になります。
このB4の寸法が美濃判に近い25.7cm ✕ 36.4cmになったので「これでよし」となりました。
このルート長方形という規格。19世紀にドイツで発明されたとされていますが、改めて美濃判のサイズを計算すると、27.3㌢✕38.4㌢でルート長方形なんですよね。1㌢長いのは誤差かと思ったのですが、帳面として使う時の綴代を考えると開いて使うとちょうどルート長方形になるのです。
「紙は心を開く」というのはこの形状によるのでは?と思いを馳せると、美濃判の帳面サイズを最初に定めた昔の人って、どうしてわかったの?天才!ってなりませんか。
その文化が脈々と受け継がれている美濃和紙そして本美濃紙。それを大事にしようとしている日本人と日本に住み日本文化を愛する仲間たち(外国人とか言わずに「日本を愛する仲間たち」と表現したい)が受け継いでいるものってなんだか凄いって思いますね。